名倉の石楯尾神社

桂川は富士山麓の山中湖と忍野を水源として、山梨、神奈川を経て相模湾へと流れていきます。その桂川の近く、県境の細い山道を辿って石楯尾神社を訪ねました。相模の北西端にあたるこの地域は、太古の海底で堆積した砂や泥が隆起した地層のためか小さな深い谷が多く、複雑な起伏があります。石楯尾神社は古代から近くのエボシ岩を遥拝する場所であり、相模国の式内社でもあり、名倉の権現さまでもあります。エボシ岩は明治時代に中央本線の工事によって消滅してしまいますが、現在もその祈りの場は守られているようでした。急な階段は途中で方角を変えて寺院のような門をくぐります。拝殿の装飾も華やかで、中世以降の賑わいも感じさせます。周囲の常緑の森は色濃く残され、そのはるか下では桂川が川岸を削っています。対岸の中央自動車道や甲州街道の喧騒からは全く離れたこの場所で、静かに昔むかしからの人々の思いをつないでいるようでした。

コメントする

CAPTCHA


「雑草」を無料購読できます

購読はこちら
閉じる